半期ごとの成果評価シートの自己評価欄を見ると、女性の方が男性より自己評価を低くつける傾向があります。同じ仕事ぶりであっても、男性の方が自己評価が高いのです。管理職を打診された場合に「自分では力不足で管理職は務まらない」と考える女性が多いのは、このような自己効力感※の低さが原因にあるようです。
心理学者のバンデューラによれば、自己効力感を高めるためには次の4つの要素が必要です。
① 自分の過去の成功体験
② ロールモデルによる代理経験
③ 「自分はできる」と繰り返し自己暗示する
④ 人前で緊張するなどの生理反応をコントロールする
この中で、とくに①の成功体験は持続性が高いことから重要と言われています。上司としては、部下にまず簡単な仕事で成功体験をさせてから、徐々にハードルを上げていくことがポイントになります。なるべく若いうちに責任のある仕事を任せ、成功体験を得させることによって、部下は仕事を面白いと感じるようになっていきますし、管理職に対する抵抗感も少なくなっていきます。
女性が管理職・リーダー職に就きたがらない理由のひとつとして、キャリアの早い段階で仕事の面白さを実感するような体験が出来なかったことがあるのではないでしょうか。以前のコラムで、男性上司のアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)が女性活躍推進の障害のひとつになっている可能性について指摘しました(「上げ底女性管理職」は女性側の問題か 参照)。このことは、管理職の助走段階の仕事を経験させるという経験値の観点からだけでなく、「成功体験を得させる」という自己効力感の観点からも、解決すべき課題のひとつということになります。
女性社員側にも、自分自身で自己効力感を高めていく努力が必要です。いつも同じようなレベルの仕事で満足せずに、少しハードルの高い仕事に積極的にチャレンジしていくような姿勢を持つことです。いま自分が担当している仕事の中に「こんなことも出来るのではないか」と思うことがあったら、それを提案すると同時に、実際にその業務を自分自身で担当してみるのです。筆者自身も、会社のロゴマーク改定のプロジェクトに携わった時に、改定の経緯や社内アンケートの結果を全社に向けてプレゼン発表したことが、自分にとって大きな自信になりました。いつも少しだけ背伸びすることを心がけるようにしていると、それが自信へとつながっていくでしょう。
※自己効力感…「自分ならできる」という確信をもっている状態